1on1で「大丈夫です」を鵜呑みにしない|無理のサインを見落とさない対話
1on1で部下に、
「最近どうですか?」
「仕事、大丈夫ですか?」
と聞いたとき、
「大丈夫です」
「特に問題ありません」
と返ってくることがあります。
その言葉を聞いて、
「本人が大丈夫と言っているから、問題ないだろう」
と、そのまま話を終えてしまうことはないでしょうか。
もちろん、本当に問題がない場合もあります。
一方で、責任感が強い人や、周囲に迷惑をかけたくない人ほど、少し無理をしていても「大丈夫です」と答えることがあります。
本人自身が、自分の負担の大きさにまだ気づいていないこともあります。
だからといって、上司が表情や話し方から「きっと何かある」と決めつける必要はありません。
大切なのは、「大丈夫」という言葉を疑うことではなく、言葉だけで判断せず、今どのような状態なのかをもう少し具体的に確認することです。
この記事では、1on1で「大丈夫です」という言葉の奥にある無理のサインを見落とさないために、どのような対話をするとよいのかを整理します。
こんな組織・ご担当者さまへ
- 1on1を実施しているものの、いつも「大丈夫です」で終わってしまう
- 忙しい社員ほど「問題ありません」と答えることが多い
- 突然の休職や退職の前に何かできなかったか、と感じることがある
- 部下の変化にどこまで踏み込んでよいか分からない
- 管理職によって1on1の質にばらつきがある
- 「困ったら言ってね」と伝えているが、なかなか相談が上がってこない
- 働く人が無理を抱え込みにくい職場をつくりたい
「大丈夫です」は、必ずしも状態を表す言葉ではない
1on1で「大丈夫です」と言われると、上司としては安心します。
しかし、「大丈夫です」という言葉が、必ずしも
「余裕があります」
「何も困っていません」
「今の働き方をこのまま続けられます」
という意味とは限りません。
たとえば、
「今は何とか終わらせられそうです」
という意味で「大丈夫です」と言っていることがあります。
あるいは、
「相談するほどではありません」
「周りも忙しいので、自分だけ言いにくいです」
「うまく説明できないので、とりあえず大丈夫と言っておこう」
という場合もあります。
ここで気をつけたいのは、
「大丈夫と言う人は、本音を言わない性格だ」
と個人の性格だけで捉えないことです。
相談しにくい背景には、その人自身の考え方だけでなく、職場の忙しさ、上司との関係性、仕事の分担、評価への不安、過去に相談したときの経験など、さまざまな要素が関係していることがあります。
つまり、「無理をしていても大丈夫と言ってしまう」という状態は、本人の性格だけの問題ではなく、対話や仕事の持ち方を整理することで扱えるテーマでもあります。
エトワールの法人向けセッションでも、こうしたご相談では、まず「なぜ本音を言わないのか」を探すのではありません。
現在どんな仕事を抱えているのか。
どこで負荷が大きくなっているのか。
何なら相談できて、何になると言いにくくなるのか。
本人と職場、両方の状況を整理するところから始めています。
1on1で見たいのは「本音」よりも「変化」
「本当はつらいのでは?」
と相手の本音を当てようとすると、1on1はかえって話しにくい場になってしまいます。
上司が確認したいのは、心の中を言い当てることではありません。
むしろ参考になるのは、その人の「いつも」と比べて何か変わっていないかです。
以前より仕事に時間がかかるようになった。
小さなミスが増えた。
会議で話さなくなった。
残業が増えている。
仕事の優先順位を決めにくくなっている。
休みの日にも仕事を気にしている。
これまで楽しそうに話していたことを話さなくなった。
こうした変化があるからといって、すぐに「心身の不調だ」と判断する必要はありません。
1on1は診断の場ではないからです。
ただ、
「以前と少し違うな」
という変化に気づいたときに、そのままにせず、仕事や生活の状況を確認するきっかけにすることはできます。
「大丈夫?」ではなく、具体的に聞いてみる
「大丈夫ですか?」
という質問は、答える側にとっては意外と難しいものです。
大丈夫か、大丈夫ではないか。
二つの選択肢しかないように感じるからです。
少し疲れているけれど仕事はできている。
一つの案件だけかなり負担になっている。
今週は大丈夫だけれど、この状態が来月まで続くと厳しい。
実際の状態は、そんなふうにもっと複雑です。
そこで1on1では、
「今、一番時間を使っている仕事は何ですか」
「今週、予定外に増えた仕事はありますか」
「今持っている仕事の中で、少し重いと感じるものはありますか」
「今のペースがあと1か月続いても大丈夫そうですか」
「一つ減らせるとしたら、何を減らしたいですか」
など、少し具体的に聞いてみます。
すると、
「全部大丈夫です」
では見えなかったことが、
「実は、この案件だけかなり時間がかかっています」
と具体化されることがあります。
1.言葉と仕事の状態を一緒に見る
本人が「大丈夫です」と言っていても、実際の仕事を見ると、
締め切りが重なっている。
担当案件が増えている。
周囲のフォローまで担っている。
休みを取りにくくなっている。
ということがあります。
このとき重要なのは、
「本人は大丈夫と言っている」
という自己申告と、
「現在どれくらいの仕事を持っているか」
という事実の両方を見ることです。
本人の言葉を尊重しながら、仕事の状態も確認する。
どちらか一方だけで判断しないことが、無理の早期発見につながります。
2.「つらいです」と言わせることをゴールにしない
1on1では、
「もっと本音を話してほしい」
と思うこともあるかもしれません。
しかし、必ずしも本人が
「つらいです」
「限界です」
「助けてください」
と言えるようになることがゴールではありません。
むしろ、
「この仕事は今週中でなくてもよいですか」
「ここだけ誰かにお願いしたいです」
「次の仕事を受ける前に、今の優先順位を確認したいです」
といった、小さな調整の言葉を使えることの方が、日常の仕事では役立つ場合があります。
無理を抱え込まないために必要なのは、急に何でも話せる人になることではありません。
自分の状態を確認し、必要なときに少し調整できることです。
3.話を聞いたあと、仕事の調整まで考える
1on1でよくあるのが、
「大変なんですね」
「無理しないでくださいね」
と話を聞いて終わるケースです。
もちろん、話を聞いてもらえること自体に意味はあります。
しかし、負担の原因が仕事量や役割にある場合、話を聞くだけでは状況は変わりません。
たとえば、
締め切りを変更する。
優先順位を決め直す。
一部の仕事を別のメンバーへ渡す。
会議を減らす。
判断が必要な仕事を上司へ戻す。
という具体的な調整まで考える必要があります。
エトワールの法人向け支援でも、単に「無理しないようにしましょう」で終わらせず、何を本人が持ち、何を周囲へ戻し、どの段階で相談するのかまで整理していきます。
こうしたテーマは、知識として「抱え込まない方がいい」と知るだけでは、なかなか変わりません。
日々の仕事の中で、どんな言葉を使うのか。
上司と部下の間で、どのくらいの段階から共有するのか。
どこまで自分で持ち、どこから相談するのか。
実際の仕事や言葉、距離感まで落とし込むことが大切です。

「困ったら言ってね」だけでは相談できないこともある
上司から、
「何かあったら言ってね」
と伝えることは、とても大切です。
ただし、無理を抱え込みやすい人ほど、
「まだ困っているほどではない」
と考えます。
本人の中では、
少し疲れている。
仕事が多い。
最近余裕がない。
でも、まだ働けている。
という状態なのかもしれません。
そのため、「困ったら」という基準では、相談するタイミングがかなり遅くなることがあります。
そこで、
「新しい仕事が入ったら、今持っている仕事と一度優先順位を確認しましょう」
「残業が続いたら、本人から言わなくてもこちらから確認します」
「月末だけでなく、途中でも仕事量を見直しましょう」
など、相談するタイミングを具体的にしておく方法があります。
本人が勇気を出して「助けてください」と言わなくても調整できる仕組みがあると、1on1も話しやすくなります。
管理職がすべてを抱える必要もない
部下の変化に気づくことは大切ですが、
「自分が何とかしなければ」
と管理職自身が抱え込む必要もありません。
1on1で明らかな心身の変化が見られたり、通常の業務調整だけでは対応が難しい状態が続いたりする場合には、人事・労務担当者や産業保健スタッフなど、社内外の適切な専門職につなぐことも必要です。
上司の役割は診断をすることではなく、
「いつもと少し違う」
という変化に気づき、必要な対話や支援につなぐことです。
管理職自身が一人で判断しなくてもよい仕組みを、組織として持っておくことも大切です。
1on1で確認したいこと
1on1のあと、「大丈夫と言っていたから大丈夫」で終わっていないか、一度振り返ってみてください。
本人の言葉だけでなく、実際の仕事量や働き方も確認できたか。
「大丈夫?」だけではなく、具体的な質問ができたか。
最近の「いつもと違う変化」がなかったか。
話を聞くだけでなく、必要な仕事の調整まで考えたか。
本人が限界を訴えなくても相談できる仕組みがあるか。
管理職だけで抱えず、必要に応じて人事や専門職へつなげられるか。
すべてを一度に整える必要はありません。
まずは次の1on1で、
「大丈夫です」
と返ってきたあとに、もう一つ具体的な質問をしてみる。
そこからでも始められます。
ミニケース|「大丈夫です」のあとに、もう一つ聞いてみる
たとえば、毎回の1on1で、
「特に問題ありません。大丈夫です」
と答えるメンバーがいたとします。
仕事もきちんとこなしているため、表面上は問題なく見えます。
ところが上司が、
「今、一番時間を使っている仕事は何ですか」
と聞いてみると、
新しく加わった案件に毎日かなりの時間を使っていることが分かりました。
さらに確認すると、以前から担当していた仕事もそのまま残っています。
本人にとっては、
「できないわけではないから、大丈夫」
だったのです。
そこで、
「では何を減らすと、今の仕事を無理なく続けられそうですか」
と一緒に整理し、一部の仕事の締め切りを変更することにしました。
ここで大切なのは、
「本当は大丈夫ではなかったでしょう」
と本人の言葉を否定しないことです。
本人に無理を認めさせるのではなく、現在の状態を一緒に見えるようにして、必要な調整をする。
それだけでも1on1の役割は大きく変わります。
まとめ|「大丈夫」の奥を読むのではなく、もう少し具体的に聞く
1on1で部下が、
「大丈夫です」
と答えたとき、それを疑う必要はありません。
ただ、その一言だけで、
「問題なし」
と判断しないことも大切です。
本人の言葉を尊重しながら、現在の仕事量や変化を確認する。
「大丈夫?」ではなく、具体的に聞く。
必要であれば、話を聞くだけで終わらせず、仕事の調整につなげる。
そして、本人が限界を訴えなくても相談できる仕組みをつくる。
無理を抱え込まないために、誰かが急に強くなったり、何でも本音で話せるようになったりする必要はありません。
一人で考えていると、
「まだこれくらいなら大丈夫」
「私がやれば済むから」
という元のパターンへ戻りやすいこともあります。
だからこそ、その人に合う相談の仕方や仕事の持ち方を、本人だけに任せず一緒に整えていくことが大切です。
1on1を、問題が起きてから話す場ではなく、無理が大きくなる前に小さく調整できる場へ。
「大丈夫です」のあとに、もう一つ聞いてみるところから始めてみてください。
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1on1を導入しているけれど、毎回似たような会話で終わっている。
部下の変化に、どこまで踏み込めばよいのか迷う。
管理職によって、声のかけ方や対応にばらつきがある。
そうした段階からでも、現在の状況を整理することができます。
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